噂―ウワサ―

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  「ミサ?  夜に病院に戻るなんて  何かあったのか?」 本当に、やっちゃんは、 私をわかってくれる。  ―少しだけ、甘えさせて―。 鍵を返しながらつぶやく。 「今日…婚約者って言う人が  マンションに来たわ。  高級外車でね。」 「そうか。別に構わない。」 やっちゃんは、冷静過ぎる位、 落ち着いて話す。 「どうして?だって私、  とっさに由美子先輩の名前を  言っちゃったのよ。  やっちゃんと私の秘密を  知られたくなくて。」 「何故、由美子さんの名前を?  まぁ、いい。紗英は、  いろんな奴と寝てるからな。  その方が好都合だよ。  浮気がバレたら、アイツと  別れる口実にもなる。  アイツは、久條先生とも  時々会っているからな…。」 紗英って言うの?あの女―。 拓海が? 今までナースばかりに、 気を取られていたが、 やっちゃんの婚約者とも まだ続けて会っているなんて…。 「でも、やっちゃんも、  浮気してるって、  思われるよ…?」 さすがに、気が遠くなり、 私はやっちゃんに もたれかかった。 「ねぇ?やっちゃん?  やっぱり、私、  やっちゃんの  支え無しでは、  頑張れない―。」 そう言った後、 タバコに火を着けようとした 仕草に、自分でも驚いた。  ―クセニナッテイル…―。 出したタバコの箱に火をつけ、 「タバコはやめるわ。」 と、青白く燃える火を見つめ、 私は、初めて、やっちゃんと、 キスをした―。 ミサが困った時は助けてね。   ―わかったよ―。 この夜、私は拓海の行動は、 追わなかった。
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