―片恋―

2/31
2285人が本棚に入れています
本棚に追加
/235ページ
『雷矢!!』 『随分イライラしているな?生理か?』 その声に、膨らませた頬をより大きくした万里の顔に、俺の頬は自然と緩んでいく… 『もう!! 僕は怒ってるんだよ!!』 なるべく出さずにいようとしたのに、俺の細やかな反応に気付いた万里は、 『もういい!』 と言ってソッポを向いてしまった。 淋しそうに目を伏せ、俯き加減になると… 『嘘だよ!怒ってないよ!』 と焦った様子で俺の元に駆け寄る万里。 こんな些細な日常が、俺にとって何より幸せで… いつまでも、あり続けるものだと信じていた… 大好きだから。 大切だから。 万里を困らせるだけでしかない、俺の気持ちは。 伝えるつもりなんて… 微塵もなかった。
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!