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幼き日々
普通のどこにどもいるような5人家族。裕福でもないけれど、貧しい生活でもない。
真面目な父親に専業主婦の母。そんな二人の二番目の子供として産まれたユナ。
夫婦喧嘩もあるし、もちろん兄弟喧嘩だってある。
それでも、仲の悪い家族ではなかった。
でも、三人兄弟の真ん中のユナは、真面目でデキのいい姉と自分が比べられ差別されているような気がいつもしてならなかった。いつも姉のお下がりの服を着るのが嫌で嫌で仕方なかった。
親戚中で唯一の男の子の弟も、みんなにかわいがられて、自分だけ、ほっとかれてる気がしてならなかった…。幼心に淋しかった。孤独を感じた。
そのおかげか、気が付くと大抵のことは自分でやる子供になっていた。
しかし幸せな家族だった。体の弱いユナと弟の為に、父はお酒を飲まなかった。いつでもすぐに病院に連れて行けるようにと。
そんなこと知ったのは随分年をとってから。父がお酒を飲んでいなかたったかなんて記憶にない。
父は晩酌を昔からしているのだと思っていた。
裕福ではないけれど、仲の良い家族だったはずだ。休みには家族で出掛けたりもした。親さえいない子供がいる世界で、ユナは恵まれていた。しかしそれに気付けなかった。当たり前だと思っていた。たかがお下がりくらいで、お金持ちのお嬢様に産まれたかったなんて、よく考えていた。
当たり前の毎日が実は恵まれていることに気付けないなんて、なんて愚か者なんだろう…。平凡は=退屈。しかし何よりも幸せなのだ。そのことに気付くことさえ出来ず、しようとせず、不満ばかりを口にする…。
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