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「澄坂だよな?その制服。」
「はい。一年の姫萩優奈です。」
「そっか。俺は河野泰敬(コウノ ヤスタカ)。二年だ。」
先輩だという事実は予想していただけにあまり驚きはしなかった。
「ああいうのはさっさと逃げるに限るぜ?」
「一方的にまくし立てられてしまって・・・」
「ま、助けれたから俺は別にいいんだけどな。」
そう言って踵を返し、手をヒラヒラと振ってその場を後にしようとする泰敬先輩を私は呼び止めた。
「待って下さい、泰敬先輩。」
「ん?」
「手、怪我してます。」
さっき振っていた手の甲にはよく見れば切り傷が出来ていた。助けてくれた時にできてしまったのだと思う。
「ちょっとだけ、動かずにいて下さい。」
「あ、ああ・・・」
絆創膏なんて持ち合わせていないけれど、ハンカチなどで押さえておけば応急処置にはなると考えて泰敬先輩の手に巻いた。
ポケットから取り出した白のハンカチで傷を刺激しないようにゆっくりと丁寧に巻いていく。
「助けて頂いたお礼にもなりませんが。」
「気にしなくて良かったんだがな。」
「それでは、失礼しますね。」
苦笑する河野先輩に頭を下げ、小走りでその場を離れた。
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