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「おはよう、呉葉。」
「おはようございます。黎人さんにお客様ですよ。」
眠い体を無理やり起こし、居間に入るなり、呉葉が嬉しそうな顔をしながら言った。
「おはようございます。」
「・・・優奈?どうしてこんなところに?」
「一緒に登校したいと思って・・・。駄目ですか?」
女の子というのは卑怯だと思うときがある。駄目かと聞かれると断るにも断れなくなる妙な迫力というか、何かがあるような気がしてならない。それに・・・
「駄目も何も、同じ所に居るんだ。一緒に登校しない方が無理じゃないのか?」
「それじゃ『駄目』というよりも『嫌』という事ですか?」
「・・・勘弁してくれ。呉葉」
冗談です、と笑みを零しながら、呉葉が居間から出て行く。
「全く・・・呉葉にはかなわないな。」
「楽しそうですね、呉葉。いつもあの調子ですか?」
「スノウと一緒にいなければね。」
タイミング良くスノウが俺の足元へと歩いて来たので、そのまま抱き上げた。
「こいつがスノウ。前まで俺にしか懐いていなかったんだが、最近は呉葉と一緒にいるみたいだ。」
「綺麗な猫ですね。触ってもいいですか?」
そう言いながらスノウに手を伸ばしたが、察知したスノウが暴れ、俺の腕から抜け出した。
「・・・私、嫌われてるんでしょうか?」
「いや、呉葉も最初はそうだった。触らしてくれるようになるまでかなり時間が掛かったっけ。」
涙ぐむ優奈を尻目に、スノウは炬燵の中へと潜って言った。
「そろそろ出ようか、優奈。」
「あ、はい。」
優奈は名残惜しそうにスノウの潜った炬燵を見つめた後、その場を後にした。
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