縮まる距離と触れ合う心

2/4
前へ
/103ページ
次へ
「おはよう、呉葉。」 「おはようございます。黎人さんにお客様ですよ。」 眠い体を無理やり起こし、居間に入るなり、呉葉が嬉しそうな顔をしながら言った。 「おはようございます。」 「・・・優奈?どうしてこんなところに?」 「一緒に登校したいと思って・・・。駄目ですか?」 女の子というのは卑怯だと思うときがある。駄目かと聞かれると断るにも断れなくなる妙な迫力というか、何かがあるような気がしてならない。それに・・・ 「駄目も何も、同じ所に居るんだ。一緒に登校しない方が無理じゃないのか?」 「それじゃ『駄目』というよりも『嫌』という事ですか?」 「・・・勘弁してくれ。呉葉」 冗談です、と笑みを零しながら、呉葉が居間から出て行く。 「全く・・・呉葉にはかなわないな。」 「楽しそうですね、呉葉。いつもあの調子ですか?」 「スノウと一緒にいなければね。」 タイミング良くスノウが俺の足元へと歩いて来たので、そのまま抱き上げた。 「こいつがスノウ。前まで俺にしか懐いていなかったんだが、最近は呉葉と一緒にいるみたいだ。」 「綺麗な猫ですね。触ってもいいですか?」 そう言いながらスノウに手を伸ばしたが、察知したスノウが暴れ、俺の腕から抜け出した。 「・・・私、嫌われてるんでしょうか?」 「いや、呉葉も最初はそうだった。触らしてくれるようになるまでかなり時間が掛かったっけ。」 涙ぐむ優奈を尻目に、スノウは炬燵の中へと潜って言った。 「そろそろ出ようか、優奈。」 「あ、はい。」 優奈は名残惜しそうにスノウの潜った炬燵を見つめた後、その場を後にした。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加