崩れ去った縁、戻らない過去

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泰敬に会った後、妙に大人しくなった優奈の手を繋いだまま、校門前に到着した俺達の前に久しぶりに見る顔があった。 「黎人・・・・・・。」 「・・・仁。」 仁と早紀だった。あの事件以来、初めて顔を合わしたかも知れない。 「元気にやってるか?黎人。」 「見ての通りだ。」 あまり話す事もないから優奈の手を引いて校舎へ向かって行く。すると意外にも早紀が口を開いた。 「黎人、あのさ・・・」 「行こう、優奈。」 話を続けようとした早紀の言葉を聞かずに歩みを再開する。あの時に早紀と交わした『約束』があるから。 「黎人さん・・・?」 「何?」 「怖い顔、してます。」 優奈がやるせない顔をする。流石に優奈に心配させる訳にはいかないな。 「気にしないで良い。これは俺と早紀の問題なんだ。」 「そう・・・なんですか。」 素直に引き下がった優奈に心底安堵していた。 けれど忘れていた。 優奈がどういう行動に出る子かを。
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