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「お前は仲直りしたいのか?」
「俺は・・・・・・」
ズキリと来た。龍志が仲直りしたいんだな?と聞かず、『したいのか』と聞いて来たことに俺の何かに響いた。
「何故、話を聞いてやらない?」
「?」
「その幼なじみ、早紀だったか。そいつはおそらく謝りに来たんじゃないのか?」
俺はその話さえ聞く耳を持たなかった。約束があったからと言って。
「怖いんじゃないのか?謝られるかも知れないから。」
「俺はあいつと・・・」
「話を『しない』んだろ?『聞いて』やる位もできないか?」
次から次へと核心をつく龍志。何も言い返せる言葉が見つからない。
黙る俺に畳み掛けるように龍志の言葉が続けられる。
「もう信じられないんだろ?そいつの事が。一度信じて貰えなかったから。また裏切られるのが怖いから。」
「・・・やめろ。」
「だからお前は・・・」
「やめろっ!」
俺の怒声に辺りの喧騒が嘘のように鎮まり、静寂が訪れる。それでも龍志は口を開くのを止めなかった。
「この世に間違えない人間はいない。俺やお前、そしてそいつも。その過ちさえ正させてやる機会も与えないのか?それで良いのか?黎人。」
「っ・・・」
真っ直ぐに、本当に真っ直ぐに俺を見る龍志。すぐに答えられない俺に以外な声が掛かった。
「仲直り、して下さい。黎人さん。」
「優奈?どうして?」
「実は泰敬先輩に協力して貰えるように頼んだんです。」
この時全てを理解した。
泰敬が俺を昼休みに食堂へ誘ったのも。
優奈が用事があって無理だと言ったのも。
全て俺に早紀と仲直りさせるきっかけを与える為だと。
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