交錯する気持ち、踏み出す勇気

4/5
前へ
/103ページ
次へ
「お前は仲直りしたいのか?」 「俺は・・・・・・」 ズキリと来た。龍志が仲直りしたいんだな?と聞かず、『したいのか』と聞いて来たことに俺の何かに響いた。 「何故、話を聞いてやらない?」 「?」 「その幼なじみ、早紀だったか。そいつはおそらく謝りに来たんじゃないのか?」 俺はその話さえ聞く耳を持たなかった。約束があったからと言って。 「怖いんじゃないのか?謝られるかも知れないから。」 「俺はあいつと・・・」 「話を『しない』んだろ?『聞いて』やる位もできないか?」 次から次へと核心をつく龍志。何も言い返せる言葉が見つからない。 黙る俺に畳み掛けるように龍志の言葉が続けられる。 「もう信じられないんだろ?そいつの事が。一度信じて貰えなかったから。また裏切られるのが怖いから。」 「・・・やめろ。」 「だからお前は・・・」 「やめろっ!」 俺の怒声に辺りの喧騒が嘘のように鎮まり、静寂が訪れる。それでも龍志は口を開くのを止めなかった。 「この世に間違えない人間はいない。俺やお前、そしてそいつも。その過ちさえ正させてやる機会も与えないのか?それで良いのか?黎人。」 「っ・・・」 真っ直ぐに、本当に真っ直ぐに俺を見る龍志。すぐに答えられない俺に以外な声が掛かった。 「仲直り、して下さい。黎人さん。」 「優奈?どうして?」 「実は泰敬先輩に協力して貰えるように頼んだんです。」 この時全てを理解した。 泰敬が俺を昼休みに食堂へ誘ったのも。 優奈が用事があって無理だと言ったのも。 全て俺に早紀と仲直りさせるきっかけを与える為だと。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加