回想

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あれからもう十年だよ。その間に色々あったよ。親父の後を追った母ちゃん。親父と同じ場所で同じ方法で逝ったよ。そっちで会えたかな?親父のいなくなった淋しさ紛らわす為に親父の残した保険金使い果たして、その上会社の人騙して千五百万円も借金して逝っちゃったよ。また俺は助けられなかった。自分の事で頭がいっぱいで母ちゃん迄頭が回らなかった…親戚は親父が一番嫌ってた糞ったれの馬鹿女が嘲りにきたよ。親父の葬式に出したの心底後悔したよ。俺とあの馬鹿女だけはいい死に方出来ないね、地獄行きだよ。親父、今俺は娘が一人いるんだ、親父が逝った後に知り合った女と結婚してさ、一度別れた後に違う男の子供宿して帰ってきやがった。親父が生きてる時なら間違いなく許さなかったけどさ、馬鹿な女でさ、散々考えて俺の子供として育てる事にして生まれる前に籍入れたんだ。浮気癖が治らなくて子供の為に別れたよ。俺が引き取った。色々あったけど、何とか十年間生きてきたよ。俺なりに頑張ってきた…でもさ、俺はどうすれば親父に会えるのかな…あの約束果たせるのかな…十年間、一日も考え無かった日は無いんだ。俺も死ねば会えるのかな?でも俺には死ぬ勇気も無い。死んでも親父が居る所には行けないよね。俺にはこれからどう生きて行けばいいのか分かんないんだよ…教えてくれないかな…親父がいないのがこんなにも寂しいとは思わなかった。親父がこんなにも大きな存在だったとは…今更だけどね…俺さ、最近娘と親子になれたのが幸せに思えるんだよ、この十年で初めて幸せだと感じた。親父が逝って以来初めて…親父と交わした約束果たせなかった、もう絶対に果たす事の出来ない約束…どんなに考えても果たせないんだ。だから俺考えたんだ。俺はこの娘を絶対に幸せにする。そうする事で親父との約束を果たした事にしてくれないかな。都合のいい自己満足かもしれないけど…俺が死んでも親父にした事は消えないし、消すつもりもないんだ。ただどんな形であれ、あの時の約束だけは死ぬまでに果たしたい…どうしても…これからも俺の葛藤は続くだろうけど、俺と娘を見守ってくれないかな…親父。
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