ｓｕｒｅｌｙ

『練習？』

問いかける僕に月子は小さく頷いた。

『貴方が私を見つけてくれた時、頭の中で声がしたの。《お前たちが同じ時代に生まれ変われたのは運が良かった…しかしお前は猫という姿…それではあまりにも不憫でならない…お前の名前の通り月が満ちる時、ほんの数日ではあるがヒトガタになれるようにしてやる。彼が思い出すまで何日いや何ヵ月かかるかは解らないが、それまで人目につかぬようヒトガタになる練習をしておけばいい…但し忘れるな。月の欠けが大きい時にはかなりの体力を消耗する…心配をかけたくなければ加減しなくてはいけないぞ…》と…それなのに私…貴方が帰って来るのが遅いのをいいことに無茶しちゃって…』

申し訳なさそうにうつむく月子に手を伸ばし、僕はそっと頬に触れた。ビクッと身を震わせ、おずおずと顔をあげ僕を見上げる月子…

『月子…ありがとう』

『ありがとう？何故？』

『とにかく、今はありがとうって言葉しか浮かばないんだ…だから、ありがとう…』

僕は月子を引き寄せ抱きしめた。

『ずっと、ずっとこうしたかった…月子…愛してる…愛してる…』

『…っ…くっ…』

きつく抱きついた月子は、僕の腕の中で肩を震わせ泣いていた。
僕の目からも涙が溢れ、月子の髪を濡らした。

『いつかホントにこうして抱きしめる事が出来るんだね？』

月子は腕の中で小さく頷いた…