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『月子…』
目が覚めた僕は、涙を拭い月子を探した。『おはよう。目が覚めた?』そう言ってキッチンから月子が顔を覗かせるのではないかと錯覚した。
しかしそこに月子の姿は無く、猫の姿の月子もいなかった。
『月子…』
僕はもう一度呼んでみた。
にゃあ…
玄関の方から月子は現れもう一度にゃあと鳴いた。
『まだ完全に回復してないんだね?僕が仕事に行っている間、無茶しちゃだめだよ?満月までまだ日はあるし、ぐったりしてる月子見てたら心配でマトモに寝られないよ…良いね?』
にゃあ…
月子はわかったと言うように頷いた。
『あれ?困ったな…月子…ご飯何食べる?なんか…猫缶じゃ悪い気がするけど…だけど体は猫だしね?』
一人でブツブツ言いながらうろうろしていると、月子は猫缶を鼻先で押し付け僕の前に寄越した。
『猫缶でいいの?』
にゃあ
『まあ…月子がそれで良いなら…』
僕は月子の餌皿に猫缶をあけた。月子は今まで通りそれを食べ始めた。僕はぼんやりその姿を見ていたけれど、ふっと思って時計を見るとまだ余裕がある…
『シャワーを浴びてくるよ。』
そう声をかけ、そのまま眠り込んでしわしわになったスーツをハンガーにかけ、シャワーを浴びた。
まともに寝ていないと言うのに、やけに頭がすっきりして自然に笑みが浮かぶ僕がそこにいた。
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