surely

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(あの子見たとき何かピンと来たんだよな…他の猫とちょっと違う雰囲気あるし…) 僕はあの子の名前を考えながら家路についた。 あの子がいる公園から10分程の場所にある小さな庭と小さな縁側が気に入って、30年のローンを組んだ家。 最近はマンションでも動物は飼えるけど、やっぱり少しでも緑や土があった方が、人間も動物も落ち着くっていう持論がある。 ペットショップも好きでたまに行くけど、僕としては、血統書付きの気取った猫より、雑種でも誇り高く生きているような猫が好きだった。 僕はある日公園であの子に会った。 シルバーグレーのボンヤリとした縞模様で、もしかしてアメリカンショートヘアーの血筋があるんじゃないかなって思える顔立ち… 僕が見つめると、媚びる訳でもなく、かえって僕が観察されているような眼差しを投げ掛けた。 僕は心の中を見透かされる様でドキドキした。 あの時僕はきっとあの子に恋をした。 一緒に暮らすのはあの子しかいないって思ったんだ。 『そうだ。あの子の名前!ムーンにしよう。嫌がるかも知れないけど洗ったらきっとあの子銀色になるよ。あの何もかも見透かしてるみたいな瞳の輝きも静かだけど、凄く存在感あるし!』 僕はあの子が『わかった』と言うように『にゃあ』と鳴く声が聴こえた気がした。
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