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僕は翌日の日曜日、公園に出掛けあの子を探した。
大体入り口から3つめのベンチの裏の木陰にいる。
なんの為かは自分でも解らないけど、なるべく然り気無さを装ってその場所に向かった。
いた!
声をあげるのを辛うじて堪えてゆっくり歩み寄ると、あの子は(また来たの?)とでも言いたげに僕を見据える。
『そんな顔して見ないでよ。君の名前考えて来たんだよ?気に入ってくれれば良いんだけど…』
僕は探る様に彼女を覗き込んだ。彼女は(期待なんてしてないわ)とでも言いたげに、にゃあと鳴いた。
『あの…さ。ムーンなんてどう?お月様の事だよ。ムーン…で、いい?』
にゃあ…
『気に入ってくれた?』
にゃあ
二度目のにゃあは
(貴方にしては上出来ね)だろうな…と思えて何だかおかしかった。
『それでさ。図々しいかも知れないけど、僕の家来ない?最近はおかしな人間が多くて、傷つけられたりさ、殺されたりする動物が多いだろ?そうなったら大変だしさ?』
(そういう貴方も怪しいんじゃない?)
そう言われた気がして僕は慌てて弁解する。
『そりゃ、信じられないかも知れないけど、僕は何かを傷付けて喜びを感じる人間じゃないし、居心地悪かったらいつでも此処に戻って来れば良いんだからさ?』
にゃあ…
(嫌だと言ったってまた貴方来るんでしょ?わかったわよ)
ムーンは立ち上がり伸びをすると
(案内しなさいよ)
と言うように、僕を見上げてにゃあと鳴いた。
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