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その晩僕は不思議な夢を見た。
仕事帰り、いつものように公園脇を通りすぎ我が家に向かって歩いている。空には今昇り始めた満月のまあるい光…(早く帰ってムーンにご飯あげなくちゃ)そう思っているのに、妙に公園の中が気になって、視界を公園に移す。
公園の…そう、ムーンがいつもいたベンチには、月の光に輝いた、ムーンのように背筋を伸ばし月を見上げる女の人…
僕は初めて会ったのに凄く懐かしい様な、愛しい様な感覚に包まれそこから動く事が出来ない…
彼女は振り向きはしなかったけれど
『もう少し…もう少しだから待っててね…』
と、言ったような気がした所で目が覚めた。
『まさかね…』
目覚めると同時に僕は頭だけ動かしてムーンを探した。
にゃあん
(信じないなら今のままよ?)
そう聞こえた気がしてドキドキして回りをグルリと見回した。
『まさかね…』
もう一度呟くと、物凄くリアルに感じたあの女の人が誰だったのだろうと考えながら、朝食を食べて仕事に向かった。
帰り道、なんとなく気になりながら公園脇を通りすぎた。あのベンチにはやっぱり誰もいなくて(当たり前だよな…夢だもの)と、一人で苦笑した。
玄関を開けてただいまと声を掛けつついつもムーンがいる場所に目をやり、僕の心臓は止まるかと思った。
彼女が静かに佇み外を眺めていた。
『えっ?何で?』
声を上げると、その姿はたちどころに消え失せ、ムーンがにゃあんと声をあげるだけだった。
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