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「簡単なものしか作れなかったけど」
申し訳なさそうに言う虎狼に、大きくかぶりを振った。
これで…簡単って!
あたしだったらこれだけで精一杯だよ!
女の子より料理の上手な男の人って――。
憧れるけど、自分の好きな相手って思うと、ちょっと複雑。
「頂きます」って手を合わせて食べ始めれば、やっぱり凄ーく美味しくて。
料理、出来ないよりは――出来た方がいいな。
なぁんて、思いながら、美味しい料理に舌鼓を打った。
「月華は本当に美味しそうに食べるね」
「だって、本当に美味しいもん」
柔らかに笑いながら、言う彼に、軽く興奮しながら返答した。
そんな風に言われるって事は……よっぽど幸せそうに食べていたのかな。
食い意地が張ってるみたいで恥ずかしい――。
羞恥から料理に落とした視線を、そぉーっと戻すと、極上の微笑みがあたしに向けられていた。
――かっこいい。
その笑顔…反則だよ…。
でも、そんな虎狼がやっぱり好き。
「え?」
驚いた顔で虎狼が聞き返す。
え――?今、あたし――何て?
咄嗟に口を手で覆う。
やばっ…
今の気持ち、声に出ちゃってた?
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