第4話

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   バイクに乗るのは、初めてだった。  お兄ちゃんと自転車の二人乗りはあるけど、お兄ちゃんバイクの免許は持ってないはず――だし。  いきなり何かをしているお兄ちゃんだから、今もないとは限らないけれど。  最初は――ワンピースの裾が気になって、周りなんて見ることが出来なかった。  それでも、だんだん速度に慣れてきて、20分くらい経つと、もうどうすれば上手くワンピースの裾が広がらないか、が分かってきた。  色気がない話だけど、スカートを足で挟めばいいんだよね……。  元々――スピードがあるものが大好きだから、風を切って走る単車の後ろは気持ちよかった。  ううん、虎狼の後ろだからかもしれない。  手を回して伝わってくる虎狼の温もりもあったかい。  こんなに、虎狼に近付けることなんて、滅多にないもん。  虎狼の運転も危なげないものだったけど、もっと彼に密着したくて、抱き付く腕に力を込める。  ぎゅう。と音をたてて抱き締めると、信号待ちのとき、あたしの手に彼が優しく手を添えてくれたりして、その度に嬉しくて仕方ない。  そんなこんなで、水族館にはあっという間に到着した。 *
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