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「まだ時間があるから…。その間に俺はペンギンが見たい」
虎狼はパンフレットと看板を確認しながら、ペンギンのコーナーに歩いていく。
「ペンギンってなんか虎狼のイメージじゃないよ?」
意外な選択。
虎狼は何ていうか、サメとか好きそうな気がする。
後は鯱とか、獰猛系?
雰囲気は王子様ぽくて優しいんだけど、そんなイメージがあるの。
「うん、ペンギンって月華ってイメージだよね」
「何それ」
確かにペンは可愛いけど、暗に短足って言いたいの?
それとも……胴長?
はっ!同じ意味だ。
真顔で首肯する虎狼を複雑な気持ちで見上げた。
どっちにしろ褒められた気は全くしなくて、不満からぷくっと頬を膨らませる。
「ふぐみたい」
降ってきた言葉に目を見開く。
ペンギンの次は河豚?!
「ひっどーい」
「ほら、そっくりじゃん」
抗議をしながら更に頬に空気を詰め込んだ。
虎狼はツボにはいったらしく、クスクスと笑うのを辞めない。
――何だか面白くない。
そのままむくれていると、「ほら、いくよ」と引きずられる様に建物の外に設置されたペンギン広場に連れていかれた。
***
「わぁ!可愛い!ねぇ、あの奥にいるこの動き見た?」
水と戯れるペンギンを前に、あたしは歓声をあげた。
円らな瞳と愛らしい動作についつい虎狼の腕を掴み、お気に入りのペンギンを指差す。
「機嫌直るの早いなぁ」
「ペンギンに罪はないもん」
「はいはい」
どこか投げやりな虎狼の返事は無視して、気持ち良さそうに泳ぐペンギンの姿をしばらく鑑賞する。
「次は月華に似たふぐをみよう」
全く心外な発言と一緒に、戻ることを提案した虎狼と一緒に建物の中に入る。
虎狼がさっさと発見した河豚が泳ぐ水槽を見る。
これとあたしが似てるって――…酷いなぁ。
ふぐって河の豚って書くんだよね。
地味に傷つくなぁ……。
不満を隠しながらも気持ち良さそうに泳ぐふぐを眺めていた。
良く見れば…愛嬌のある顔してるかな?
ぶさかわ?
あー…、あたしぶさかわなんだぁ。ちょっと傷ついた…。
薄暗い水族館の中、明るめに照明に照らされた水槽に虎狼の顔が写る。
そんな虎狼と案外可愛い顔(悔しいから自己暗示)をした河豚を交互に見ていたら、穏やかだった虎狼が一瞬で鋭い目をした。
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