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はらり、ひらり
桜の花びらが二人の周りを散っていく中で小さく、小姫にだけ伝えるように囁きました。
「わしの名は朧。誰一人として知らぬ、わしの真の名は朧だ」
小姫はその名を噛み締めるよう繰り返しました。
「おぼろ…朧…」
「そうだ。朧だよ、小姫」
鵺は嬉しそうに微笑みを浮かべて小姫を見つめていました。
「朧、今一度約束を…ずっと一緒にいてください」
「小姫が望むなら…約束しよう。ずっと一緒だ…」
あの時よりも細く長くなった小姫の小指と、あの時から変わらない鵺の小指が絡み合いました。
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