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一本の桜がありました。
もう何百年も咲き続けるそれの名は『枯らずの桜』。
桜は長くその地にいました。
平和な時が過ぎ、戦の時が過ぎ、いくつもの時の都が変わるのを桜は見ていました。
いえ、『桜』が見ていた訳ではありません。
正確には桜に同化した一人の『女』。
そして、もう一匹。
美しく、雄々しい妖。
人が付けた名は『鵺』
「桜や…側におるからの」
鵺は優しく幹を撫でました。
女はその手を擦りました。
しかし、鵺の目には『女』ではなく『桜』を映していました。
『朧…私を許して…』
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