第一話:カンユウ

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先生も含めクラス全員が、異様なまでにフレンドリーなのだ。 質問責めなんかは、転校した身であればあっても仕方ないとは思っていたけど、皆笑顔で、心から自分を歓迎してくれているという空気はひしひしと伝わってきていた。 だけど僕にはそれがどうしても素直に受け入れられなかった。 何でこんなに馴れ馴れしいんだ?そんなに物珍しいか?もしかして、何か裏があるんじゃないか? ……"怖い"…… …有り難いことなのは分かってる。 けれどその時僕にあったのは、安堵感ではなく恐怖感だった。 疑心暗鬼、だったか。人の好意を逆手にとる…僕の悪癖だ。 どうしていいか分からず、ただ言われた質問に当たり障り無い回答をし、その後の休み時間は殆ど携帯をいじったり音楽を聴いている"振り"をした。 そうして僕はクラス皆のせっかくの好意を踏みにじり、それからは毎日飽きもせず、携帯の画面か音楽プレーヤーばかり見つめて、高校生活を過ごしている。
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