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案内された場所は、屋上だった。
初夏の空はまだ日が高く、もうじき夕方だというのに、依然として青空が広がっている。
今日は、雲の一つも見えない。
辺りにはよくある普通の学校と同じく、少し汚れた無機質な地面と、背の高いフェンス。元は綺麗な緑色だったんだろうけど、今はもう錆びついて、所々に歪な赤銅色の斑点ができている。
そこに、一人の男子生徒の姿があった。
「よーっす!」
「おう!」
どうやら彼も田村慈の知り合いらしい。
彼女と気の合いそうな、溌剌とした、明るい雰囲気。
でも、少しだけ崩した着こなしの制服や、細いピンで留められた、金髪でやや長めの前髪からして、何というか、ちょっとやんちゃな奴なのかもしれない。
二言三言、田村慈と話ながらこちらにやって来ると、一瞬僕をじっと見た後、
「よっ、お前がハシモト君?」
人懐っこそうな笑顔で話しかけてきた。
「え…は、はぁ。」
とか何とか適当な返事をする。こういうタイプと話すのは苦手だ。変に緊張してしまう。
彼は、僕のそんな内心などもちろん知らず、嬉しそうに「おれは ねんがんの だんせいたいいんを てにいれた!」と声を上げた。
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