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『ようこそ、ハワイへ!!』
空港へ降り立った私を出迎えてくれたのは、ホテルのボーイだった。
挨拶の抱擁、鮮やかな色で作られたレイと頬にキスを貰う。
豪華なリムジンに乗せられたら、非日常の空間へ。
ウェルカムシャンパンが注がれ、細いグラスの中で小さな気泡を浮かべて…その黄金色を見つめながら、わざと優雅な仕種を装って一口。
窓の外には広大なオーシャンビュー。
どこまでも果てしなく続き、海の蒼と空の青が溶け合う様までが見えた。日本では決して見ることが出来ない色の海と空が、私の心を解き放つ様。
憧れた景色がこの旅のどこかにあって、まだ見ぬ絶景もきっとあるはず。
携帯もパソコンも手帳さえも持たずに来た。
辛うじて付けてきた腕時計ももう今だけは必要が無い。金具を外して、腕から引き抜けば僅かな重みが消えて、また私を軽くした。
このバカンスの一週間の間、私を縛るものは何も無い。
強いていえば、太陽と月と星だけかも知れない。朝と夜のサイクルだけが私に時間を教えてくれて、活動範囲を広くも狭くもする。そして、大自然の素晴らしさとハワイの色々な姿をきっと見せてくれる。
白いゲートをくぐれば、ホテルの敷地に入った。
急に景色が変わるわけではないけれど、手入れが行き届いた道が続いて。花々が咲き乱れる道を行けば、やがて白いホテルが見えた。
『どうぞ』
「ありがとう」
ボーイがドアを開けてくれて、私はリムジンから降りた。
爽やかな風が、頬を撫でた。
見渡すと海、空、緑、そして花。
自然に笑みが零れる。
私の一週間のバカンスが、今始まった。
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