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夜、少女は一人で眠った。村の人達が泊まっていこうか、と言ってくれたが、一人になりたかった少女は首を横に振った。
村の人達がいい人達だということは少女もうっすらと分かっていた。だが、少女は一人になりたかったのだ。
朝方、まだ薄暗い頃だった。
ふと目覚めて、少女は外へ水を汲みに出た。
三日三晩泣き暮らした少女の心は、少し晴れていた。
――もう十分泣いた。いい加減、村の人達と会話して、これからどうしていくか決めたほうがいい。
もう一人の自分が、自分に言い聞かせる。
少女は、キッチンテーブルの花瓶に活けられたカスミ草を思い出す。
村の誰かが飾っていったのだろう。ピンクの花瓶にカスミ草。少女の母親が好きだった花。
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