85人が本棚に入れています
本棚に追加
世界は若く、まだ悲しみを知らなかった。
存在達が去った後、一人ぼっちになることも、その意味もまだわからなかった。
存在達は、世界に約束した。この世界を、たくさんの存在で満たすことを。
そうすれば、世界は悲しくないだろうと考えたのだ。
高次元の存在達は、約束の証として、自らの一部を世界に与えた。
「約束しよう。この世界と私の命がある限り、私の一部はこの世界で輝き続けよう」
そうして、太陽ができた。
「約束しましょう。この命とその輝きがある限り、私の一部は輝きの周りを巡りましょう」
そうして、惑星ができた。
「約束を。輝きを巡るものの周りをさらに巡ろう」
そうして、月ができた。
世界は喜んだ。自分以外の存在が、さらに増えたことに喜んだ。
しかしやがて、自分を生んでくれた存在がいなくなっていることに気付いた。
世界は自身の内を、生んでくれた存在を探して激しく駆け巡った。その際、エネルギーや様々なものがぶつかり合い、星や星屑ができた。
あの存在達がどこにもいないと知った世界は、初めて悲しみを知った。
悲しみの咆哮は世界を揺らし、高次元の存在達にまで届いた。
高次元の存在達は、嘆く世界のために、一瞬だけ降臨した。そして、もうひとつ、世界に約束した。
「強く望むならば、私達はいつでも高次元より馳せ参じよう。短い時ではあるが、側にいよう」
世界は涙を流した。高次元の存在は、それを優しく受け止めた。
そうして、地球ができた。
もはや人々から忘れ去られた、世界創造の神話である。
最初のコメントを投稿しよう!