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少女は、祖母と2人で暮らしていた。
少女の両親は、「ショウカンシ」で、少女を置いて戦争に行ってしまった。
聞けば、祖母の夫……つまり、少女の祖父……もショウカンシで、戦争に駆り出され、亡くなったらしい。
「私はね、反対だったのよ。召喚士が召喚士と結婚するだなんて。父親も母親もいなくなってしまったら、お前はどうなるの。お前がかわいそうじゃないの」
祖母はそう言って、幸せそうにまだ赤子の少女を抱く両親の写真を見ては涙ぐんでいた。
その祖母の言葉を聞き、少女は自分がかわいそうな子供であることを知った。だが、祖母が哀れむほど、自分はかわいそうではないのだということにも気付いていた。
確かに、両親と離れ離れになってしまったのは寂しいが、両親は遠く離れた戦地にいても、時折少女を訪ねてきていたのだ。
少女が今まで、どんな場所でも、どんな本ででも見たことのない獣に姿を変えて。
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