少女

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 少女の元に訪れたのは、ある時は七色に光る羽を持つ鳥。ある時は金色に輝く小さな龍。ある時は柔らかな翼と黄金の角を持った鹿。  いつも家の近くの小さな森から、ひょっこりと現れる。  少女が、その幻想的な生き物が両親だと気付いたのは、獣がいつも2匹のつがいでやって来るからだった。  獣達がやって来るとき、空気がふわりと優しくなるので、少女はすぐに気付くことが出来た。  まるで世界が喜んでいるかのような、くすぐったい空間になるのだ。  少女は外に幻想的な獣の姿を発見すると、すぐに家から飛び出し、獣を抱きしめ、その年頃の子供が毎日両親にするように、楽しかった出来事や悲しかった出来事を報告した。  獣らは話すことが出来なかったが、少女には十分すぎるほど、彼らが何を言いたいのかが伝わっていた。  慰められたり、時には怒られたり、励まされたり、悩み解決のヒントをもらったり。  だから、両親が側にいてくれなくても、少女は両親の愛情を感じることが出来た。  両親は、国を守るために戦争に行っているのだ。少女の暮らす国を守るため、戦争に参加しているのだ。戦争に勝って終われば、家族皆で暮らせる。だから、戦っているのだ。  しかし、ある日を境に、獣達は姿を現さなくなった。
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