歯車仕掛け

2/2
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
      一音。   舌が跳ねて、わたしの言葉を造り上げるプロセスを演じている。       前髪が遮る視界の端で薄汚れた影が踊り、私は扉の鍵を落としてしまった。   かちり。   関節の軋む音だろうか、白くふやけた肌の底から小さな音が聞こえる。       夕暮れに髪がさんざめく。 その一筋一筋が光っては、私の指先や喉から熱を奪ってしまう。   虚空に紫が宿るとき、それは終わりと同じかもしれない。       手首にリボンをかけて、拘束されたであろうふりをした。   かちりかちりと響く何かは、通りすがりの鼓膜を叩く前に息絶えてしまう。 私はその意味へ蓋をするように、ただ一つだけ瞬きをする。       かちり。       両の脚が根底としてそこに佇んだとき、私は何を知るのだろうか。           .
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!