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一音。
舌が跳ねて、わたしの言葉を造り上げるプロセスを演じている。
前髪が遮る視界の端で薄汚れた影が踊り、私は扉の鍵を落としてしまった。
かちり。
関節の軋む音だろうか、白くふやけた肌の底から小さな音が聞こえる。
夕暮れに髪がさんざめく。
その一筋一筋が光っては、私の指先や喉から熱を奪ってしまう。
虚空に紫が宿るとき、それは終わりと同じかもしれない。
手首にリボンをかけて、拘束されたであろうふりをした。
かちりかちりと響く何かは、通りすがりの鼓膜を叩く前に息絶えてしまう。
私はその意味へ蓋をするように、ただ一つだけ瞬きをする。
かちり。
両の脚が根底としてそこに佇んだとき、私は何を知るのだろうか。
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