鹿児島最速の走り屋

2/2
前へ
/394ページ
次へ
僕が大学4年のとき、フロア数が4階に及ぶネットカフェでバイトをしていました。 個室ブースを清掃する際、その階段の移動があまりに辛く 「清掃はスポーツである」 という言葉を残して、過労死するかと思いました。 しかし、その一週間後。 筋肉痛と手を取り合い、階段昇降もただのエクササイズに。 体操のお兄さんバリの爽やかな笑顔で2段ずつ駆け上がるほどに。 働き始めて3ヶ月、新しく入ってきた男性社員にこんなことを言われました。 「はじめ君はあれだね、下り最速だね」って。 (か、かっこいい!下り最速?そんな誉めたって、キャバクラの名刺とうまい棒の食べカスしか出ないけど?) 下り最速だなんて、お上手なんだから。 嬉しさのあまり、全身の筋肉が弛緩し、股の下から黄金水が垂れ流れたりはしませんでしたが、恍惚の表情はしていたと思います。 ※恍惚(こうこつ) ギッリギリまでオシッコ我慢して出した時の表情のようなうっとりする様子。 「下り最速だね」 と言った社員が続けます。 「階段下りるのが」 って、やっぱり階段か。 階段を一段飛ばしで駆け下りる僕は、確かに走り屋と呼べなくもないけども。 階段の走り屋って…カッコよさ、破格の9割引。 たまに調子に乗り足グネって、ブチギレした仏像みたいな顔で痛がっているのは秘密。
/394ページ

最初のコメントを投稿しよう!

358人が本棚に入れています
本棚に追加