悪い冗談

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病院に入ってからも、バナナを手渡され、食べようと思って皮をむいたら中からキュウリが出てきたり、「お父さん」って呼んで振り返ったら、顔が白塗りした顔だったり……。 暇なのか、次から次に下らないいたずらをして喜んでいた。 ある日の日曜日、病院にお見舞いに行くと、お父さんの顔の上に白い布がかけられてあった。 その布の不吉な意味に気付き、私の心臓はわしづかみにされたように、ギュウっと縮んだ。 息苦しくなって……そんな……急に……と言う思いが、意識の遠くで騒いでいる。 病室の中の空気が一瞬で張り詰め、ショックで身体が思うように動かなかったけど、私はその白い布から目を離せないまま……ガクガク震える足で、お父さんのベッドに近づいていった。 お父さんの隣に立つと、金縛りが溶けたように、緊張が解け、私はすがるようにお父さんを揺すった。 「お父さん! ……お父さん!!」 声も上手く出せなかったけど、私は叫ぶように言った。 お父さんの身体は、まだ温かく、ぐにゃぐにゃと揺れ、顔から白い布がハラリと落ちた。
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