悪い冗談

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その白い布の下から、お父さんがウインクするように片目だけを開けて、私を盗み見ていた。 えっ……!? 「生きてる。生きてる。……ビックリした?」 お父さんは私の慌てぶりが予想外だったようで、少し驚きながら言った。 死にかけてる人間が死に真似なんて、いたずらするだろうか? 緊張していた物が一気に緩んで、音や匂いや……感情が戻ってきた。 私はお父さんが生きてて、安心したのと、悪趣味ないたずらに怒りが込み上げて、病室を走り出た。 あやうく泣きそうになった顔を見られたくないのもあったけど。 気を沈める為に、私は屋上に出た。 病院の屋上には、タオルとパジャマとシーツがいっぱい干してあり、バタバタと軽く風になびいていた。
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