病院嫌いの父

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コホンコホンと空咳の音を聞いて、隣のお父さんが心配そうに私を見ていた。 「風邪でもひいたんじゃないのか?」 「ううん。違う」 「ここは病人だらけだから、風邪移されるなよ」 自分も病人なのに、どこか他人事のようにお父さんは言ってる。 もう入院して三ヶ月にもなるのに、まだ病院嫌いの医者嫌いは治ってないらしい。 「ほら、早く中に入ろう。こんなとこにいたら、風邪がひどくなるぞ」 「だから風邪じゃないって」 私の話を聞かず、お父さんはさっさと振り返り、自分の病室に戻ろうとした。
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