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「いらっしゃい」
きゅっ、きゅっ、と草を踏む足音と共に、通りすぎて行った風にも似た、心地の良い声が降ってきた。
少年ははっとして体を起こす。
どうやら野原の奇妙な美しさに恍惚としていたらしい。
「いらっしゃい、って、ここがどこか君は知っているの?」
声の主である少女は清潔そうなアイボリーのワンピースをひらひらとさせて笑った。
イエスともノーとも言いはしないが、少年は彼女の桜色の頬に出来たえくぼを肯定の意味だと理解する。
「貴方は、クローバーを探しに来ました」
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