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マモリ先生は振り返り、また板書を始める。
「魔力をエネルギーに変換し使う事を魔法という。
魔力をどれだけエネルギーに変換するかで魔法は威力を増すんだ。
これが魔法が『初級、中級、上級、最上級』に分かれる理由だ」
ここで竜牙は視線を感じ、軽い嘲笑を聞く。
それは明らかに自分に向けられているものだと分かる。
「ちっ…別に魔法が使えないから何だっていうんだよ……!」
「……竜牙君、大丈夫?」
前の席からランドが心配そうにこちらを見てきた。
生まれてからそういう視線などには慣れてきた。
何故なら竜牙は魔法が使えない。人類共通の『常識』が通用しないのだから。
人は自分より劣っている者に直面したとき、大抵の人間は哀れむか見下すものだ。
だからそれ以外の感情を向けてくれる相手……心配してくれるランドの存在は竜牙にとっては珍しく、かけがえのない存在だ。
ランドは気は弱いが、友達思いですごく優しい。竜牙にとってはその事がすごく嬉しい。
ランドは持ち前のマイナス思考が働かなければ、魔法だって多分学年1を争うレベルだ。
そんな人間が魔法を使えない自分と親友なのだから世の中分からない。なんだか笑えてくる。(マイナス思考ってのはどういう意味かというと……え~と、確か……それは今から多分先生が説明してくれるっ!!)
竜牙は必死に思い出そうとするが早々に諦めて、先生が説明してくれるだろうと高をくくって丸投げする。
そんな竜牙の思惑というか下心を感じたのかマモリ先生の視線を受ける。
「こら!そこは何を話してるんだ!?ちゃんと私の話を聞け!」
「ごめんなさい」
「す…すいません……」
女性らしいよく通る声だが、それでも迫力ある声で怒られた。
「全く……よく聞けよ、お前達!
魔法は土地、気候などに影響されることがある。
これが大陸ごとに奨励している魔力属性が違う理由だ。
特に影響するのが使う者の精神面だ。これにより魔法は威力が変わる。
逆に言えば技術がなくてもある程度は魔法の威力を強めることができる。
上級魔法は精神面と技術の両方がいるから使えるものは数少ない。
最上級魔法はもはや才能だな。先生も使えないし……」
そこでマモリ先生は肩をすくめて少しいじけてみせた。
魔法を使う者の精神面。
これがランドが学年トップのラージャに適わない理由だった。
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