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「──雷流し!」
という声が聞こえたと思った次の瞬間。
教室全体に突然電流が流れ、電気に触れた生徒が痺れだす。
被害を受けなかったのは事前に防御魔法を張った先生とランドと……それに何故か竜牙。
「うるさいわね、あんた達!」
教室に不機嫌なラージャの声が響く。
そう、この魔法を使ったのはラージャ。
広範囲に電流を流し、敵を痺れさせる初級魔法「雷流し」だ。
その魔法こそ、基本属性に当てはまらない「雷」の属性。
それは勇者の証。
初級魔法でも「雷」は他の属性の中でも群を抜いている。
勇者の強さの秘訣はこの雷にあると言ってもいい。
「あれ?俺、助かってる!?ランド!俺にも防御魔法かけてくれたのか!サンキュ!」
被害を受けなかった竜牙はランドにお礼を言う。
「えと……防御魔法は竜牙君の範囲までは間に合わなかったんだ、ごめんね……」
「そうなのか?」
ランドは落ち込みながらも続ける。
「うん。もしかしたらラージャちゃんが限定範囲外に自分と君を指定したんじゃないかな?」
「限定範囲?」
竜牙が分からないという感じに尋ねる。
「今の場合、電気は教室全体に流れたよね?この魔法が働く範囲を限定範囲っていうんだ……
でも魔法を使ったラージャちゃんもこの教室内にいるよね?
このままだとラージャちゃんも…「待ったランド!もういい!」
説明の途中で遮り、真剣な顔をする竜牙。
「なるほど、わからん。さすが大魔法師の息子だな」
まったく分からなかったらしい竜牙にランドはずっこける。
感心していう竜牙にランドは立ち上がり、これを謙遜した。
「ぼ、僕なんてまだまだだよ……!それに……これはつい最近授業でやったことだよ竜牙君!」
「……え?そうだったか?すまん。寝てたか記憶にない」
マモリ先生が責める様に睨んできたので、竜牙は申し訳なさそうに頭を下げる。
ランドはというとそんな竜牙に呆れてどうしていいか分からず苦笑した。
ここで授業終了の鐘が鳴る。
号令係が感電したままなので、ラージャが代わりに号令をかけて授業は終わりを迎えた。
「ほんと……うるさい奴ら……」
まるでけろっとしている竜牙を見ながら、ラージャは不機嫌そうに呟いていた。
そのラージャの行動は、本当に教室が耳障りでうるさかったから雷を流してクラスメートを黙らせたのか──
それはラージャ本人以外は誰にも分からなかった。
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