勇者育成学校

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「―失礼します。」 竜牙は進路相談室の扉を開けてマモリ先生がいることを確認し、軽く頭を下げて席につく。 すると先生はいきなり本題に入った。 「竜牙……お前は魔法が使えないなりによく頑張っている。現に剣術は三年生トップレベルだ」 竜牙は魔力が0なので魔法を使おうとしても、その元のエネルギー源がない。 いくら魔法を磨こうとしても無駄なのだ。 ……だから竜牙には昔から剣術しかなかった。 その甲斐あって、剣術ではまず負けることはない。 竜牙にはその自信があった。 「……しかしな……剣術だけでは単位が足りないんだ。 いくら剣術の点数がいいとはいえ、魔法の点数が0だと単位が足りない。そう上から言われたんだ………」 その言葉に竜牙は思わず椅子から立ち上がってしまう。 「でも入学試験のときは魔法の事は特別免除に……!そんな今更……!!」 マモリ先生のこの言葉に竜牙は嫌な予感を覚えたのだ。 「待ってください!それって……つまり、このままだと……!?」 「ああ『進級出来ない』……!」 竜牙の嫌な予想は当たる。 「…卒業……出来ない……?勇者になれない……ッ!?」 額に汗が流れる。体が震えだす。視界が揺れる。 勇者になるのは昔からの夢だった。その夢があったからつらい環境にも耐えられた。 ――しかし今。無情にもその夢が閉ざされた。 竜牙は呆然とし、椅子に倒れこむように座る。 しばらくそうした後、急に我に返り焦ってマモリ先生に問いかける。 もう一度勢いよく立ち上がった竜牙。今度は椅子を倒した。 だが今の竜牙にとってそんなことは本当にどうでもよかった。 「マモリ先生!どうして……!!なんで進級出来ないんですかッ!?」 竜牙にとってはその方が問題だった。 「そもそも、『魔法が使えない』にもかかわらず入学を認めたのが特例中の特例なんだ……なんせ竜牙は……いやこんな事、この問題には関係ないな。落ち着いて聞いてくれ竜牙。席に着け」 マモリ先生は動揺する竜牙をたしなめて、一旦席に座らせた。
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