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「はぁ……はぁ……マジ疲れた」
パシリから帰って来た竜牙は自分の席に座るとそのまま疲れて突っ伏した。
「大丈夫かい…?」
そんな竜牙の前の席から、どこか気の弱い声が聞こえてくる。
「おお、何とかなぁー……ありがとよ、ランド」
竜牙が顔を上げると、目の前には気が弱そうな黒髪の少年がいた。
彼は自分を心配そうに見てくれている。
身長は竜牙より少し低く、痩せ型。黒い髪は竜牙と違って綺麗に整えられている。
彼の名前はシュバイツ・ゼム・ランド。
この勇者育成学校に何故いるのかと思ってしまうような見た目通り『基本』は気弱な少年だ。
だがランドの親友である竜牙は必ずしもそうではないと知っていた。
「ほら、君のぶんの昼飯……どうせ自分の分なんて買う余裕なかったんでしょ?」
ランドはそういってメロンパンを竜牙に差し出してくれる。
周りから落ちこぼれと言われている竜牙に付き合っていたら、ランドだって竜牙のせいで何かしら嫌な目に合うかもしれない。
けれどもランドは、普段気弱な癖に妙に強情なところもあり、常に困ったような笑顔で竜牙と一緒にいてくれる。
要するにランドはとても優しいのだ。
竜牙にはもったいない最高の友達だった。
「うわっ!大人気のメロンパンじゃんっ!!すげぇな!どうやったらあの大混雑の中メロンパンなんて買えるんだよ!」
だから竜牙は感謝する。
その気持ちを声に出して笑う。
もうさっきのクラスメイト達から受けた嫌なことは忘れていた。
なによりメロンパンは本当に凄かった。
竜牙は昼飯は大体学校の購買部で買っているから分かるのだが、昼は購買部が大混雑するのでメロンパンのような人気の商品はすぐ売り切れてしまう。
「ちょっと裏技を使ったんだよ……購買部の値蔵さんとは仲が良いんだ。事前に頼べば大抵は残しといてくれるんだ……内緒だよ?」
「……そんな反則技みたいな方法で……」
そんなランドの言葉に竜牙は正直呆れてしまう。
ランドと購買部の値蔵さんはなんというか性格がかなり似ていた事を竜牙は思い出す。
その性格はさっき話した通り……
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