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そんなラージャに竜牙と、関係ないランドまで脅える。
「あ!メロンパン!?あんたなんでそんなもの食べてるのよ!?もうそれでいいわっ!!」
だがラージャは竜牙に制裁を加えるその途中で、彼の手に握られたメロンパンを目ざとく見つけた。
それを無理やり竜牙から奪い取り、ラージャは幸せそうに頬張りだす。
「あっ!テメッ!!」
だが竜牙は内心安堵する。メロンパン一つで『彼女の魔法』から身を守れたと思えば安いものだった。
殺気と共に、彼女から感じたプレッシャーも霧散する。
だがそこで、
「それは竜牙君にあげたメロンパンだよ……!」
「ランド!?」
よせばいいのに竜牙に対して優しさを発動し、真面目なランドは抗議した。竜牙は手で顔を覆う。
自分の為なのが分かる為、竜牙は本当に申し訳なく思う。
「なによランド!!いつもおどおどして!?なんか文句でもあるのっ!?」
「え……いや、ない…よ………」
この様にランドは気が弱く、超強気のラージャには絶対適わない事が竜牙には分かっていた。
そして台風のように去っていくラージャを竜牙とランドの二人は黙って見送るしかない。
――無理も無い。ラージャはおそらく、このクラス1の実力者なのだ。
片や魔法が使えない落ちこぼれ。片や臆病者。
本気で戦えば勝負は分からないが、普通に戦っても勝機はないだろう。
ラージャが完全にいなくなってからランドは喋り出す。
「ごめんね竜牙君……僕が気が弱いばっかりに……」
「気にすんなよランド……あいつに勝てる奴なんてそうそういないんだからよ……」
消えた昼食、メロンパンを持っていた手を宙で手持ち無沙汰にぷらぷらさせながら、
情けないなぁと思いつつ、竜牙はランドと共に溜め息を吐いた。
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