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乾と二人暫く行くと、また一人の男と出会いました。
「アンタが噂に聞く
桃太郎かい?」
「貴方も鬼退治に
着いて来てくれるんですか?」
「僕は申(シン)。
――いいよ、
付き合ってあげても」
「――でも…
どうしましょう…。
私…吉備団子
持ってません…」
「吉備団子なんかより、熟れた果実の方が好きなんだけど――」
そう言うと、申は桃太郎を抱き締めて、赤く熟れた柘榴の様な唇に噛みつきました。
「んっ…んっ…!」
残さず味わおうとする申の舌が、桃太郎の唇を濡らします。
「あんっ…これっ…
ちがっ…ふぁっ…」
唇の端から、瑞々しい果汁の様に唾液が漏れて、申はそれすら飲み干してしまいました。
「あっ…んぅっ…
これでっ…んんっ…!
着いて来てくれる?」
「ご馳走様。
今までて一番甘い果実だったよ」
満足げに舌なめずりをして、申がこう付け足しました。
「行って上げるよ、
鬼退治に――」
こうしてまた一人、
桃太郎は仲間を手に入れました。
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