傘の忘れ物

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  『好きです』         頭の中に繰り返される台詞 なんだかご飯も進まない ぼんやりとしている私を見て 同僚の友達は不思議そうに   「どうかしたの?」   と訪ねる   ふるふると首を横に振れば また先ほどから頭を占める 台詞が脳内に響いて染み渡り なんだか顔に熱が集まるのを感じた                 今まで、所謂告白というものをされた事がなくて それどころか、小さい頃近所に住んでいた年上の男の子から 嫌がらせを受けたりからかわれ、よく泣かされてからというもの 男の子というものが苦手だった だからなるべく関わらないように 避けて生きてきた筈なのに…         同じ会社の後輩君で そういえば以前、彼が会社に忘れた傘を届けてあげたことがあった   でも、彼と関わった記憶なんて それくらいである   しかも、傘を渡した時 偶然指先が触れてしまい 反射的につい、バッと手を離せば逃げるようにしてその場を後にしてしまった 今思えば、過剰な反応で、とても失礼だったなぁ…なんて思う位、印象は良くないはずだ   ならば、彼は私のどこを好きになったのだろう…       _
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