スタートダッシュ

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扉の向こうは大きな図書館でした。なんて展開 良いんですか? 「全く、どんな造りになってるんだか」 『手前の棚を右に曲がり、次の棚を左、その目の前の棚を綺麗に片付けて、そこから直進して来て』 「もっと簡潔に!」 思わず声に出たツッコミ。 片付けて、という言葉に疑問を抱きながら散らばった本を棚に片付けて云われた通りに歩みを進める。 「次は……」 そして、云い淀む。目の前には大量の本の山。一冊でも触ったら雪崩でもおきそうなくらい山積みになっていた。 「どうしたらこんな状況になるんだ」 恐る恐る本に手を伸ばすと、本の山がぐらりぐらりと揺れた。 (僕はまだ触ってないぞ!) 自分で否定した瞬間 本の山から手が、にゅっと伸びた。 「うわっ!?」 「お願い、ちょっと助けて~」 あの女の声だった この本の山に埋もれて自力で出られなくなったのか? (ただの馬鹿じゃないか) 「馬鹿って云うな~。それより助けて~」 は…? 今…声に出してなかったのに… 汀夜はそう思いながらも埋もれた女を本の山から引っ張り出し、その衝撃で勢いよく崩れる本の山。 「また副会長に怒られちゃう~」 崩れた本の山から姿を現したのは、背の低い高等部の制服を身に纏った女。短く整えられた漆黒の髪に、それに負けない黒さを持つ瞳。何処から見ても、正真正銘の日本人だ。 肩をトントンと叩き、息を吐く。溜め息を吐きたいのはこちらだというのに…。 女はわざとらしく咳をして仁王立ちし、にっこり笑った。 「何から話そうか、月上 汀夜君」 取り敢えず、本当に先輩なのかと問いたい。image=164688508.jpg
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