届かない手

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「いくつか質問したいのですが」 「何でもどうぞ~」 「小学生に見間違われることはありませんか?」 ドゴッ、という鈍い音。 汀夜は自分の腹に思いきり入った拳を見た。 「何か云った?」 ズゴゴゴ…、と黒いオーラ全開で問うてきた。あいている片手の指をバキバキと鳴らす。 「忘れてください、永遠に」 腹を押さえて表情を歪めたまま、考える。変な人に捕まってしまった。何としても早く帰らねば…。汀夜はその為に次の質問へ移る。 「……前」 「ん?」 「貴方の名前は?」 「あたしは蒼井 捺(あおい なつ)って云うの。気軽に なっちゃん って呼んでくれて構わないわ」 「では、蒼井先輩。僕に何の御用ですか」 「華麗にスルーしたわね」 ふぅと息を吐いて、 「貴方が一番解ってるんじゃないのかしら?」 ふふ、とあの時のように妖しげに笑った。背筋に悪寒が走る。何だこの女。嫌な気分だ…。 「テレパシアとノンテレパシアの間に深い溝があるのは知ってるわよね?」 「勿論」 「じゃあその理由は?」 「え…と、ノンテレパシアとの待遇に差があり過ぎる……から?」 ブーッ!! 突然、何処からともなく聞こえた音に びくっと肩を揺らす。どうやら不正解らしい。それにしても何処から鳴ったのだろうか。 「周りの人間の事を訊いてるんじゃないわ、貴方自身のことよ」 「僕…自身……」 テレパシアを嫌う理由… 思い当たるものは、 ひとつしかなかった。
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