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ピンク色の小さな容器に黄緑のフタ。
―しゃぼん玉―
「ここ2・3年かしら?誕生日なのよって教えてあげると、しゃぼん玉をやりたいって」
いつの間にか背後に立っていた看護師が寂しそうに笑った。
涙が頬を伝った。
どうしようもない感情のうねりが身体中を駆け巡り、僕は嗚咽を漏らした。
僕よりも、ずっと小さくなってしまった母に縋り着いて小さな子供のように泣きじゃくった。
あの日の代わりに。
「母さん」
「お母さん…!」
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