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僕がまだ幼い頃、父はどの仕事をしても長続きせず、転々と職を変えていた。
当然、家庭は貧しく母は朝から晩まで働き通しの毎日だった。
気に入らないことがあると父は容赦なく母を殴り付けた。
きっと心の弱い人だったんだろう。
そんなことでしか鬱憤を晴らすことが出来なかったのかも知れない。
幼い僕に手をあげることはなかったけれど、それでも当時の僕にとって父は恐ろしい存在だった。
だから母が殴られている間も助けに入るなんて、とても出来るわけがない。
ただ一秒でも早く終わるように祈るだけ、それだけだった。
あの頃、僕がもっと勇気のある子供だったら母を助けてあげられただろうか。
皮肉なことに僕も父親の血をしっかり受け継いでいるのだと思う。
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