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母の誕生日にピンク色の小さな容器に入った、しゃぼん玉を買った。
僕が母にあげた初めてのプレゼントだ。
家には帰らず、まっすぐに神社へ向う。
悲しいことがあると母が神社に来ることを知っていたからだ。
最近は夕方になるとこの寂れた場所に母を見付けることが多くなっていた。
―お母さん―
僕がそっと母の手にしゃぼん玉を置くと母は驚いたような顔をした。
―お誕生日おめでとう―
―まぁ!しゃぼん玉なんてお母さん久しぶりよ―
母は嬉しそうに笑うと僕の頭を優しく撫でてくれた。
―へへっ。しゃぼん玉2人でやろぅよ?―
―まぁ。楽しそうね―
僕の言葉に、少しだけ赤く腫らした頬で優しく微笑む。
小さなフタを開けると淵に張った虹色の膜がパチンと弾けた。
そして母と2人でいくつもの泡玉を作った。
薄暗ぃ中にいくつもの泡玉が宙を漂う。
大きいのと。
小さいのと。
ぼんやりとした電灯の光に反射して、キラキラ、キラキラと輝く。
とても綺麗だった。
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