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茜に連れて行かれたのは、いつも俺らが先生に見付からないように隠れてタバコを吸っている、学校の近くの小さな駄菓子屋の裏だった。
茜はそのことを知っており、タバコ中毒になっていた俺に気を使ってその場を選んだのだろう。
茜にはしつこくタバコは辞めろと言われていたが、茜は俺がタバコを辞めれないことをわかっていた。
「で、何があった?」
そう茜に問いかけながら俺はタバコに火をつけた。
「…別れちゃった!好きな人ができたんだって☆」
苦し紛れな笑顔で、茜はそう俺に伝えた。
普段は鈍感な俺でも、なぜか茜の考えてることはだいたいわかる。
きっと辛いだろう…
本当は、思うままに涙を流して誰かに泣き付きたいのだろう…
だが、本当は弱いくせに、人一倍強がりな茜は絶対に自分の弱さを見せようとしない。
限られた人、そして限られた時にだけしか。
そんな茜は、いつもなら俺を放課後呼び出してまでこんな話をしたりしない。
きっと、今までにない寂しさを味わい、とても一人では耐えられなくて俺を呼び出したのだろう。
ただ、別れたという事実を笑顔で俺に伝えることだけが、今の茜にできる最大限の強がりだったのだろう…
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