「雨」

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腐って穴が空いたのだろうか。屋根にぽっかり空いた穴がある。おかげで俺がいる場所以外雨水が 入り込んでいた。 その穴を見上げても、 あるのはただの雲。 雨粒が滝のように降り注いでいた。 雨宿りに入ったこの古ぼけたバス停は雨粒が落ちるたび今にも壊れるんじゃないかと思うくらいの音を立てる。 その繰り返し。俺は何分こうしていたんだろう。 あんた…も、兄ちゃんもこうやって雨宿りしたんだろうか。俺みたいに一人ではなく、楽しい仲間と一緒に。 このバス停に一人こうやって雨宿りしていると、 なぜか懐かしさを感じた。ここにはただ古ぼけているだけじゃない。何か思い出のような物がこの場所にあるような気がした。そう、例えば この場所を訪れ出会いを果たした人の喜びや、 田舎から旅立つ若者の 期待。不安。 そして兄ちゃんが、 過ごした日々がここから始まっている気がした。
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