「雨」

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俺は俺の家族は魔女狩りの被害者だった。 親戚の兄ちゃんと苗字が同じだったからだ。 テレビで放映された 犠牲者リストに兄ちゃんの名前が出た時それは、始まった。兄ちゃんの名前…前原圭一が出たときから。 父親は突然会社をクビになった。異常者は会社に置いておけないと言われた。 母親はスーパーで働いていたのだが、客が怖がるなどの理由で辞めさせられた。 妹は学校で避けられ、 陰湿ないじめにも苦しめられた。 俺は学校で 「お前なんか消えろ」 「異常者」「お前がいたら祟られるんだよ」 こんな言葉を浴びせられ ながら暴力を振るわれた。 そんな日が何日も続くに連れ、俺にも限界がきた。ひたすら、ひたすら殴り続けた。俺を殴る時笑っている憎たらしい顔が潰れるように。ただ殴り続けた。 その日を境に誰も俺に関わらなくなり俺は完全に異常者として扱われるようになっていた。 例え俺は異常者でも、 父親や母親、妹はまともだったんだ。 決して異常者なんかじゃなかった。 あんな苦しい状況でさえ みんな必死に頑張っていた。笑顔を作ろうとしていた。暗い顔で帰ってきても家では明るく振る舞っていた。 その時は家族を苦しめる雛見沢をひたすら憎んだものだ。 そしてそんな毎日が一年ほど続き、ほとぼりが覚めた頃に俺たち家族は 静かな田舎に引っ越した。 そこは誰もが優しく、 俺たちが前原家の親類と知っても誰一人として 差別しなかった。 おかげでみんな擦り減らずに済み、今は家族全員のんびり元気に暮らしている。
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