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惨劇を越え、七月になり
雛見沢も夏らしくなってきた。夜は涼しい雛見沢では珍しい寝苦しい夜、そんな夜の出来事…
「梨花、まだ起きているのですか?」
真横から眠そうな声が聞こえてきた。
そうこの声の主は羽入。
私の長年の相棒であり、
全てを分かち合ってきた存在。
彼女がいなかったら惨劇など越えられなかったと何度思ったことか。
まあたまにいじめていたりするのはちょっとしたスキンシップのつもり。
私が横を向くとそこには当たり前に羽入がいる。
眠そうに目を擦りながらこちらを見ていた。
青いワンピース…
しかもちょっとはだけて大変なことになっている。
きっとレナがこれを見たら鼻血を垂らしながら
いつもの調子で、
「お持ち帰り~☆」
と叫んで誘拐していくだろう。
思わずクスッと笑ってしまう。
「なんなのですか!!人の顔見て笑うのは失礼なのです!」
「なんでもないわ…ただ今度寝ている羽入をレナの家に置いてこようと思ってね、きっとキムチを食べるより楽しくなるわ」
それを聞いた途端、羽入はブルブルと小刻みに震え出した。
おそらく、いや、レナの恐怖?は身体中に染み渡っているのだろう。
「あぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅ」
今度は震えに合わせてあぅあぅ言い始めた。
さすがにやりすぎたか。
「冗談よ、そういえば羽入昼間ずっとどこにいたの?」
今日は一日部活メンバーとともに裏山探索をしていた。出かける前、
羽入に声をかけたが
「今日は用事があるので
僕は出掛けられないのです」と言われ私と沙都子だけで遊びに行ったのだ。
私の質問を聞いた羽入は
なぜか微笑んだ。
全く切り替えが早い。
「梨花、惨劇を最初に越えると決意した日を覚えてますか?」
私がした質問に質問で返してきた。
「最初?一応覚えてるわよ…ぼんやりしていて鮮明には覚えないけれど、あの時の私は若かったわね」
未だ小学生の私が言う台詞じゃあないわね。
「じゃあ梨花、もし梨花がいなくなった後の世界を見れるとしたらどうしますですか?」
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