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「誕生日おめでとう私のかわいいエルザ。お前は私の宝物だ。」
「まあ、お父さまったら……」
「さあエルザ、ローソクを吹き消して頂戴」
父、母、娘。幸せいっぱいの家族団欒のひととき。純白のテーブルクロスを被せたラウンドテーブルの中心には、大粒の苺をふんだんに使ったホールのショートケーキ。
そこには13本のローソクが立てられ、照明の落とされた部屋を幻想的に照らしている。
「はい、お母さま」
少女が肺いっぱいに吸い込んだ息を吹き掛けると、部屋をやわらかく照らしていた光は失われ、窓から射し込むか弱い月明かりが部屋の片隅を力なく照らすだけとなった。
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