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千明は、自分に霊感があるとは言わない。「見えちゃう」だけだと言う。
そして、三階の窓の外を歩いていた誰かは、ただ、通り道を歩いていただけらしい。
「散歩道がそこに?」
私は、部屋の入り口から窓を指差して尋ねる。
「そうね」
千明は、怖がらなくて大丈夫なことを伝えようとしてなのだろう。カーテンを引いて窓を開けた。
「気になるなら、ここに塩を盛っておくのね、へんな御札とかに頼らないほうがいいよ。普段かよい馴れてる道が、ある日通行止めになってたら、機嫌悪くして近場で鬱憤はらす人がいるかもしれないからね」
「げっ、それって、そこらの普通にある反応だね」
「そう、普通だよ」
窓を背にした千明が、(わたしは)という言葉を言うような気がして私は口を半開きにして突っ立っていた。
おそらく、千明の言葉を遮りたかったんだと思う。
でも、それってつまりは千明が普通と違うっていう事を私が認めているから、声に出して否定するチャンスを求めているみたいなものだ。
私はいやな奴だ。
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