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すかんぽの道
水の流れと、霊の流れは密接な関係があるらしい。
自称、「私、見えちゃうひと」の千明によると、っていうだけの情報ではあるが、「私、見えないけど金縛りとか最近多いんでちょっと精神的に弱ってます」状態の私は、千明にしか相談できないでいた。
「引っ越して2ヶ月だっけ?」
「3月末に入ったから、3ヶ月たつかな」
「きれいなアパートだよね。2DKベランダ付き、これで月9万は、私も飛びつくわ。」
白いレースのカーテンを指であそばせながら千明は言う。
「まあ、わざわざ家を出て食事洗濯したくないから、当分あたしは、実家住まいだけども」
「私だって、出来ればそうしてたかったわよ。お兄ちゃんがヘンな女連れてこなけりゃ」
「ハイハイ、そりゃあ、居心地悪くなるよね~。ましてや、あんたと違って、積極的に家事手伝いしてくれりゃあ、親御さんもベタ惚れだろうし」
「だからさあ、一緒に住まない? 今からでも、一部屋空いてるよ」
そう、家を出る時から一人暮らしには不安があった。他の友達にも声をかけたけど、千明には何度となく打診したんだ。
「やめたほうがいいって、絶対後悔するから」
千明は、そのセリフを とても残念そうに言うのだ。
私は、きっと自分の弱さを助けて欲しくて同居人を求めていたんだけども、千明と生活するということを具体的に考え始めてから、なんだか、千明が抱えている孤独な異次元世界に引き込まれていってしまったのだ。
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